新世界『ザ・ラストファイト』が
織りなすファンタジー

2021.12.15 12:00

かつて自分の弱さから殻に閉じこもっていた主人公『俺』。
強い自分に憧れるだけの妄想に耽り、現実を忘れるために暴飲する毎日。
そこに現れた投影の女(役:春原未来)。彼女は弱い『俺』を嘲笑った。
『俺』は自分の殻から抜け出すことを決意し、自分の投影と戦いを挑みトラウマを克服した
…はずだった。

ここまでが前作『ファイトオアノット』の内容である。

しかし世の中は急変した。そう、未知なる脅威コロナウイルスの蔓延。
人々は外出を制限され、不自由を強いられ、生活は突一転してしまった。

四年前のトラウマから解放された『俺』も不安を抱くようになる。
再び眠れない日が続き、悪夢を見るようになってしまう。

しかし今の俺には過去の経験から自分に打ち勝つための術を知っている。
今回の戦いは負けるわけがない。

この時代に、なぜラスタドンは『ザ・ラストファイト』を撮ったのか?
誕生の経緯から、作品のきっかけ、こだわり、見どころまで話を聞いた。

取材・文:大河壱成 編集:鷹橋こういち

目次

コロナ禍だったからこそ『ザ・ラストファイト』が誕生

── 四年振りに新作『ザ・ラストファイト』を撮影することに至った経緯を教えてください。

ラスタドン
元々は前作『ファイトオアノット』でストーリー性のある実写作品を作ることはやめようかなと思っていたんです。
世の中は完全にデジタル移行しましたし、様々なメディアやサービスの浸透やデバイスの進化によって
iPhoneひとつでも4K映像を撮影できるし、スタビライザー・ジンバルも手軽に購入できる。

── アマゾンなんかでも簡単に手に入りますもんね?

ラスタドン
そうなんです。Youtuberたちの活躍によって編集技術もあがっているし、自分の作品を自由に販売できるサービスもある。
撮影・編集・販売まで、作品作りにおいては個人レベルでも充分な環境が揃っているし、素敵な作品も沢山あります。
デジタル化によって店頭に足を運ぶ必要もなくなりましたし、それに比例して円盤も売れなくなってしまった。
そんな状況下でわざわざ大掛かりな作品を撮る必要性が自分には感じられませんでした。

── 私もNETFLIXやFULU、amazon primeなんかで手軽に作品を見てしまいます。

ラスタドン
主流はやはりサブスクですよね。
コロナ禍で不自由な生活を強いられるようになって『STAY HOME』の時間が長くなりました。
僕は定期的にアプリやゲームも開発していてDLsiteで販売しているのですが、中でも昔からイラストに関しては
この業界に触れるきっかけとして描いてまいりました。あくまで趣味として、の範疇でしたけど。
外出できなくなったことを機に『PIXIV FANBOX』の活動を強化しました。始めはこじんまりとやっていたのですが、
いつからか多くの方にご支援いただけるようになって。本当にありがたいことです。

── FANBOXも精力的に更新なさってますよね?

ラスタドン
はい。自分の作品を自発的に発信できる素敵なメディアだと考えています。
皆様からご支援いただいたお金はせっかくなので、様々な絵師様とコラボしたり、新しいコンテンツを創るための制作費として還元したら、
支援者様たちへ寄与できるし、とても小さい規模なんですけど、ニッチでマニアックなこのジャンルにおける経済を循環できるかなと。
更にこの暗い時代の中で僕には何ができるだろうと考えた結果、再び大掛かりな実写作品を撮ることを決めました。

三人目の闇姫の誕生

── 桐山結羽さんを起用した理由を教えてください。

ラスタドン
大掛かりな作品を作ることに二の足を踏んでいましたけど、FANBOXの限定コンテンツにおいては、
個人レベルで撮れる映像作品の配信を定期的に行なっていたんです。
『ファイトオアノット』に出演いただいた春原未来さんにも出演してもらったり。
そこから色んなタイプの女優さんをアサインできたら、支援者の方々に喜んでいただけるかなと思って、
ひょんなことから人伝でクルーズグループの和田マネージャーをご紹介いただいて。
はじめはFANBOX用の限定コンテンツとして所属女優さんのリストをいただいて打ち合わせをしているうちに、
和田さんも制作においてとても熱い方でついつい作品作りの話題に熱が入ってしまって。
そのリストの中に桐山さんがいらっしゃいまして、目に留まりました。
小柄で華奢でとても可愛らしい印象の彼女と真逆のイメージ、つまりカッコよくてクールな『ダークヒロイン』を演じてもらったら
すごく面白い作品になりそう。そしてどうせ撮るならめちゃくちゃな映像にしたい。
そんな経緯があって桐山さんにアプローチしました。

とっても生真面目でキュートなダークヒロイン

── 桐山結羽さんの印象を教えてください。

ラスタドン
お仕事に対する姿勢がとても真面目で非常に努力家です。
最初企画を聞いてもらった時に、その大掛かりな構想からか私にできるかな?最初は躊躇されていたんです。
そこでリファレンスとなる過去の作品を見ていただいて、とにかく桐山さんをカッコよく撮りたい!
これまでの桐山さんのイメージを変えてみたい!とプレゼンしたところ、承諾してくださいました。
僕が作る作品には前もって台本や絵コンテ、ナレ、楽曲のデモなど資料を沢山準備するのですが、
撮影前にもその資料ひとつひとつに真剣に目を通していただき、撮影当日には完全な『ダークヒロイン』を演じてくださいました。
今回は作品と同時に楽曲も力を入れて作っているので、MVも同時に撮影しようと決めていました。
打ち合わせの際に以前ダンスをやっていたということをお伺いし、その特技を活かせないかなと、
ミュージックビデオ内では彼女がアレンジしたかっこよくて超絶クールなパフォーマンスを魅せてくれています。

映像美を支えるミュージックたち

── テーマ曲やBGMも全て新曲かつ、レコーディングしているのは驚きです。

ラスタドン
そうですね。映像に負けないくらい音楽も好きで。アーティストと一緒に楽曲を制作しました。
メインタイトル曲の『Round,round』は3ヶ月かけて作り上げました。
細部まで丁寧にこだわっています。
作詞も力を入れたのでぜひ歌詞にもご注目いただければ嬉しいです。

豪華なセットと特殊効果

── 撮影の舞台裏を教えてください。

ラスタドン
今回の作品のテーマは『明晰夢』。夢をコントロールできる男のお話です。
そこで今までの作品とは色の違う、非現実な世界観を作りたいと考えていました。
リングも実体のあるものを使うのではなくて、照明の視覚効果によってセットを組みました。
GX2 SINGLE SHOTやparticlarといった特効やドローンも使って演出にも拘りました。
撮影時の様子はメイキングムービーを見ていただきたいです。

最後まで再生を止めないで

── 最後に作品の見どころについて教えてください。

ラスタドン
この作品にはエロ要素は一切ありません。
役者さんたちの鬼気迫る演技、そしてスタッフ一丸となって作り上げた映像と音楽、世界観。
どんでん返しがあるので、ぜひ作品が停止されるまで再生し続けてください。
『ザ・ラストファイト』がこの先、少しでも皆様の心に残ってくださるとスタッフ一同とても嬉しいです。

── 貴重なインタビューありがとうございました。

ラスタドン
こちらこそありがとうございました!